サブリミナル白昼夢

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考察 忘れえぬ魔女の物語 彼女らの異能について

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わすまじょが面白い。いや小説の時点で分かっていたのだが(古参アッピール)コミカライズも面白い。


コミカライズは何が面白いかというと、何と言ってもリアクションと表情の豊富さだ。

表情についてはかなり緻密に描かれていて、漫画媒体という特性を上手く活かして、内面上は悲しいと思っているのに表面上は笑っている表情など、登場人物たちの複雑な感情を絵に落とし込んでいる。


この中でもかなり好きなのが優花さんの表情で、掴みどころがない性格がより一層深みを増しているところだ。底知れなさが正直とても怖い。人間と話していたと思ったら、いつの間にか目の前にいる人物の中身が人ではなかったような恐ろしさを感じる。

彼女が持っている綾香への愛情は本物なのだけど、そこから溢れ出る寵愛は、蜜のように甘ったるく、一度溺れてしまったら最後、麻薬のように二度と抜け出せなくなるような予感がある。これらがコミカライズによって遺憾なく描かれていて、恐怖しないほうがおかしい。そしてこちらの誤りを的確に冷静に指摘してくる苛烈さもある。これは綾香でも凹む。


また、主人公である綾香は表面上は冷静で知的、年寄りじみているのだけど、未散と交流し始めてから素の内面が出ているのがお気に入りだ。まったく逆の、つまり激情家で全体的に子供っぽい姿が余すところなく描かれているので、コミカライズでもっと魅力的(彼女のそれらの欠点も魅力の一つだ)に映った。

この内面の脆さを表すのが地震が起きた時、未散を失う不安からなりふり構わず駆け出すシーンだが、ここがコミカライズでは圧巻だった。

また、はじめて名前を呼ぶシーンは綾香からの視点で描かれるのだが、彼女が未散から名前を呼ばれた時の、まるで、はじめて炭酸を飲んだ時のような衝撃が伝わってきて心を動かされた。


さて、ここまでコミカライズ版の魅力を語ってきたが、ここで今一度彼女らの異能についてまとめて行きたい。ただしこれらは、本編で語られたことを紡ぎ合わせて考察しているに過ぎないため、間違っている可能性がある。

また小説1巻までのネタバレが含まれるため注意してほしい。ちなみに異能の名付けは私の独断である。


綾香の能力は「事象の観測」だと思われる。

一日が繰り返されている事象を観測できる唯一の人間。ここで重要なのは彼女の能力は絶対記憶能力ではなく、絶対観測能力と呼ぶべきものだということ。(記憶能力はあくまでも副次的なものに過ぎない)

ただし、観測者であるため、自身が死んだ可能性世界を認識できない。そのため、彼女が死んでしまった場合は『前日』または、『その日の朝』(ここで戻る日付に違いが出る理由が分からない)に戻ることとなる。

なお、夢を見ないのは彼女が観測したことは事実となるため、頭の中の出来事だとしても『実際に起きていないこと』を観測し得ないからだと思われる。


優花の能力は、「フォトモンタージュ」

繰り返される一日の瞬間を切り貼りして繋ぎ合わせ、起こったことにする。ただし、繰り返される一日の中で起こっていないことは切り貼りできない。だからコラージュではなく、フォトモンタージュと呼んでいる。

綾香の話(繰り返されている一日の話)をよく聞いていたのは、話を聞くのが楽しいからではなく、この能力が関係していると思われる。


未散の能力は「魔法使い」である。

彼女は10月5日に必ず死ぬ。生きて10月6日を迎える可能性はない。が、未散を救うために10月5日をループし続けた綾香は、観測した事象(記憶)の保持が限界を向かえたため、10月5日に必ず死ぬ未散と、その膨大な記憶を保持したままでは10月6日を迎えることができない綾香が同時に存在することになった。

生存優先度としては綾香>未散であるため、優花が観測した事象(記憶)を元にフォトモンタージュすると、自動的に、10月5日に観測した事象(記憶)を生贄に魔法を使える未散が誕生する。ここで言う魔法は文字通り魔法で、条件さえ揃えば、自身の死を回避するなど何でもできるようだ。


また、『10/5に観測した事象(記憶)を生贄に魔法を使えるようになる』未散しか生まれないのは、そうでなければ綾香が10月6日を迎えられない(観測できない)ため。観測者が存在しないと宇宙が存在しないという人間原理によるもの。


いかがだっただろうか? 今回はコミカライズ版についてとそこから新たに得た情報を元にわすまじょを再考してみた。複雑すぎて未だに詳細は理解できていないないのだが、ここは違うんじゃないか?など、指摘があったらぜひツイッターの方でコメントしてほしい。

またここまで書いたように、小説だけではなくコミカライズ版も本当に丁寧な造りで面白いので、ぜひ読んでみてほしい。