サブリミナル白昼夢

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わたなれ 4巻 感想・考察 「完成したわたなれワールドというか甘織れな子にキレる」

※小説4巻のネタバレしかありません。

 

4巻の感想ブログで使用します。と言ったのに遅くなってしまい申し訳ありません…
最高にカワイイ!
小沢サヨリ(おざわな) Twitter ID: @Ozawa_na_ (
https://skeb.jp/@Ozawa_na_/works/2

 

ついに、甘織れな子に告白を果たした瀬名紫陽花。

それに対するれな子の返答は、「じかんをくれませんか……?」
前傾姿勢の逃げの構え!
無情にも過ぎ去るタイムリミット!
いま明かされる、謎につつまれた香穂ちゃんの過去!
問題を解決するための秘策は回り道!(現実逃避)
コスプレ!洗脳!ASMR!ラブホ!
これまで積み重ねてきたれな子の罪状がんばりを今、ラストステージで爆発させてくれ!(した)

さて、私は3巻で紫陽花さんに告白…という名の感想を書き綴ってスッパリとフラれた人間ですが、そんなやつがすることと言えば、好きだった人の幸せをただ願って感想を書き殴ることだけなんですよね。

 

というわけで、4巻の感想となります。
いきなりですが作者のあとがきについて、ツッコミを入れていいでしょうか。

質問:なぜ3巻であんなヒキにしたのか
みかみてれん:(面白いと思ったから……)

鬼 畜 か ?

『やりたかったからやった』って思い切りがよすぎてキレる。こちとら3巻でブチギレてるわ。
でも、面白さで言ったら3巻のあの結末は上の上。特上(※最高ではない)の結末ではあるのだけど手心とかないのかみかみてれん。たぶんない。みかみてれんは人の心がない。でもすごくすき。

なぜなら、れな子だったらあの状況であの選択をすると思えたから。
これは4巻のラストでも言えることですが、彼女だからこそ取る行動を、彼女だからこそする選択を書いていると感じました。

でも、5巻あとがきでも『なぜ4巻であんなヒキにしたのか(面白いと思ったから…)』と書いてるような気がする。

『ラノべだから』といったような、わたなれワールドの枠外の事情なんて度外視して書き殴った結果がアレだと思いますが、だからって、駄々っ子幼女みたいなワガママで「紫陽花さんと真唯、両方と付き合う!」なんて宣言するやつおる? いたわ。それは甘織れな子です。

ともかく、この巻でわたなれワールドは一度完成したと個人的には思っています。しかしまだまだ完結はしないらしい。うれしいね。

 

最初から最後までずっとキレてる

さて本編。3巻の時は読むのが怖すぎて1ヶ月のインターバルを置いたが、4巻ではそんなことはしていられない。
ペラ、ペラ、ペラ…と、頁をめくる手を休ませることなく読み進めていった。

どうやられな子は、脊髄反射で「はい」と答えたらしく、けっきょく告白の返答のリミットを3年1ヶ月に決めた。この場面ではそれにくるしむれな子の心情をあますことなく書いていてやけに粘っこい。

ここで重要なのは、彼女は人から『好かれたい』のではなく『嫌われることを過度に恐れている』ということ。そして、本当の自分はけっして人から好かれることのない人間だと、本当の自分を見せたらぜったいに嫌われると思っていること。

自分の内面の浅薄さを明かしたらかならず嫌われてしまうという思い。
自分が嫌いな私を好きになる理由がわからないという考え。

彼女の中に巣食う過去の根は深く、それが思い込みだと切って捨てることは出来ません。
陽キャ陰キャ、相対する2つだけで物事を考え過ぎだし、誰しも陰と陽の面を持ち合わせているのだから、そこまで気にしすぎることもないんじゃ…と説教くさく言ったりもできません。ウソ、めちゃくちゃキレてた。はじまりからおわりまでずっとれな子にキレてた。
たしかにれな子にはそういった陰キャはあるけれど、自分の弱さも相手の弱さも認めて、他人を引っ張っていくような強さもあるんだよと伝えてあげたかった。

彼女は苦しむあまり、中学の時のようにサボり癖を再発させますが、昔のある写真を見つけたことで復活します。その写真が小柳(皆口)香穂と映っている小学生の頃のものです。

この学校を休んだくだりですが、真唯と紫陽花さん、香穂ちゃんはLINEしてくれてるのに、大親友の紗月さんからだけきてないのがなんかツボ。
でも次の日、「瀬名にでもノート見せてもらいなさい」って言ってるのが(自分は見せないんだ…)すごく琴紗月みがあって好き。大親友の紗月さんなので。

香穂ちゃんは今まで謎に包まれたキャラクターでしたが、4巻でようやく素顔が明かされた形になります。
といっても、そんな大したことではなく実は陰キャ女子というだけでした。
でもあれ…、香穂ちゃん、紗月さん、れな子と過半数が隠れ陰キャって、クインテットほんとに陽キャグループかな…?

『好き』を表現できる香穂ちゃんはつよい

香穂ちゃんの外面は愛嬌たっぷりで、小さいことにくよくよしない、明るく元気で愛され上手な女の子。
そんな彼女のモチーフとなっているのは、たぶん『風』かと私は思っています。
風のようにつかみどころがなく、周りを巻き込む疾風のごとく元気で、でも本当はおとなしい凪のような女の子。彼女の見た目からもピッタリなモチーフではないでしょうか?

4巻ではそんな彼女がメインとなるお話ですが、私は彼女がとても好きなんですよね。ここで、好きポイントを少しだけ挙げていきましょうか。

  • はにゃ
    今時「はにゃ」なんて使うキャラなんているんだ…って最初思ってたのですが、香穂ちゃんがやると何をしても、何を喋っても可愛いのですごい。口癖からつま先まで完全に可愛いを演じていてかわいい。
    口元に手を当てて「あらま」ってつぶやく香穂ちゃん、最高に可愛いんですよね…。一挙一動が無限に可愛い系女子なので。
    コミカライズ版むっしゅせんせいの香穂ちゃんにはいつも助けられています。命、たすかる…。
    陽キャを演じてない時でもこの口調が混じっていますが、素でもこのキャラなのか香穂ちゃん。えぇ…? すき…ってなりますよね。
    可愛さの天上天下唯我独尊。香穂ちゃんしか勝たん。

  • 好きなものをただ推す姿
    香穂ちゃんは作品に対する愛があふれているオタクですが、その愛を表現する媒体がコスプレだったと語っています。
    今の時代、SNSのちょっとした投稿から始まり、ファンアートや二次創作、感想文、果てはVtuberといったオンラインストリームによる企画型の推し紹介など多岐にわたりますが、表現媒体を問わず好きをまっすぐに表現できる人間はつよい。
    自分だけが知っていた素晴らしいと思うものを、だれかと共有して楽しむことができる。彼女はそんな、『推す』という行為の強さを知っています。
    まるで『好き』を燃料に走る機関車のよう。辛くくじけそうになった時もそれだけを原動力に突き進んでいくつよさがあります。
    そんな彼女の最初の推しは、小学生の時、言葉を交わした甘織れな子だと言えるでしょう。ここで気になるのが昔のれな子です。
    現在とは似ても似つかない過去のすがたですが、小さい頃の記憶とはいえ、れな子自身の評価と香穂ちゃんからの評価に差がありすぎではないでしょうか?
    これはれな子の妹である遥奈にもツッコまれていますが、彼女は中学時代の過去をいまだに引きずっているせいなのか客観的に見て、自己評価と自己肯定感が致命的にゴミです。しかし昔は、少なくともこの二人からは好ましい人物だと思われていたようです。
    ここまで見てきたからこそれな子を批判しますが、彼女は自分の実力を過小評価しすぎです。
    クインテットの一人ひとりと本心でぶつかり向き合うだけの力があり、だからこそ好かれているという実績があるのに、それを自信に変えるどころか選択を放り出して逃げ出す始末。しかもそれをあろうことか今まで忘れていた幼馴染の香穂ちゃんに相談するという愚行。
    香穂ちゃんからしたら、昔の憧れで今もキラキラ輝いている羨ましい旧友が自分のことを思い出してくれたと思ったら、いきなり自虐風自慢(にしか見えない)をしてくるのだ。*1
    それはキレる。香穂ちゃんがれな子をファミレスの床にはりたおしてなかったら、私がれな子をファミレスの床にはりたおしていた。まあれな子は河川敷で喧嘩までしてボロボロになったので水に流そう。(河川敷だけに)

  • よわよわモードの香穂ちゃん
    つよつよモードの香穂ちゃん、すごくいいですよね。
    自信と愛嬌たっぷりの恐れ知らずな女子高生って感じがしてとても可愛い。
    でもね、コンビニでお弁当+アイス+ポテチ+飲み物とたくさんあるのにレジ袋頼むタイミングなくて、んしょんしょ…って一生懸命抱えて帰るよわよわモードの香穂ちゃんも、とっても可愛いと思うの。レジ袋有料化ありがとう…。世界は平和になりました…。
    よわよわモードを存分に味わえるラブホ女子会のくだり最高でした。
    でも、れな子はなんで告白してきた二人をほっぽり出して他の女とラブホ行ってるの? ゴミクズ…。
    まあ打ち上げの女子会なのでまだセーフ。いやセーフか?告白の返事を待たせてるのに二人きりでラブホ女子会だぞ?
    そしてあんなのに弄ばれるよわよわモードの香穂ちゃん…。みんなの妹香穂ちゃんが…。
    誰も見たことがない、恥ずかしがるすがた香穂ちゃん。すごくそのえっ…かわいいと思うのですが、それを甘織れな子が見せてることに無限の殺意を覚える。
    というか、れな子はなんで告白してきた二人をほっぽり出して他の女とお風呂で洗いっこしてるの? ゴミクズ…。
    でも今までのお風呂シーンの中で犯罪臭ががちすぎていちばんえっちだなと思いました(最低)。でも個人的にはAVで大爆笑してる香穂ちゃんらしくてすごく好き。

とまあ、香穂ちゃんについて無限に語りたいのですが、とりあえずここで打ち止め。

作品への愛情を表現する『推す』という行為を擬人化したような女の子であり、承認欲求を満たすという当たり前の欲求を持ち合わせ、推すことの楽しさだけでなく苦しみも抱えるキャラクターの奥深さ。
どこまでもまっすぐに突き進んで推すというそのスタンスは憧れを覚えます。
わたなれの中で一番好きなキャラクターと言えるかもしれません…といってもみんな大好きなのですが。れな子は…まぁ、おいといて。

好きに向かって一生懸命に走るすがたを全力で推したくなる巻でした。

真唯がからっぽだということは無い(紫陽花さんを語るのは控える)

さて、まだまだ語り足りない4巻。
次は真唯と紫陽花さんについて語りましょうか。
いやだぁ……って!紫陽花さんについて語るのがいやとかでは無くて!紫陽花さんについて語ると脳がバグるので…こわい…。

紫陽花さんは夏休みでの貴重な経験のあと、初恋の相手へ勇気を出して告白をしました。それは真唯や、ひたむきに頑張っていたれな子のおかげでもあります。
彼女の成長した姿はこの巻でも描かれていますが、一番目に見える成長は『自分のしたいことに素直になって、本当の意味でワガママを出せた』ことではないでしょうか。

観覧車でのシーンはあまく、それでいてとても切なく、だけど今までの彼女ならぜったいにしない(できない)であろうことだったので、すごく嬉しいことだなと感じました。ただし香穂ちゃんとのラブホのくだりがあった後の紫陽花さんとのデートなのでれな子チョームカつく。

遊園地のアトラクションを純粋に楽しみながらも、真唯と来る次のことも考えるふたり、とても良いですよね。
絶叫系をめちゃめちゃ楽しむれな子もかわいいぞ。
個人的に破壊力が高かったのは、「かわいい」を好きな人に連呼されて怒る紫陽花さんでした。怒る紫陽花さんもかわいいね(わかる)。

紫陽花さんは3巻で告白をやり切ったため、付き合えるかどうかはれな子自身に委ねられます。
そのため、この巻ではあまり表舞台には登場しませんが裏ではかなりの活躍をしています。それは恋のライバルである真唯の隣に何度も友人として寄り添うことを指していますが、それをすることを教えてくれたのが、真唯自身というエモさがすごい。

真唯は『完璧』をれな子に対しては演じきっていますが、けっして見せないような姿を紫陽花さんや紗月さんには晒しています。その弱っているすがたは見ているだけでとても痛々しく辛い。

真唯の抱える『嫌われたくない』思いはれな子とよく似ています。
しかし、モデルである彼女は、人から嫌われても仕方がないと考えていました。そんな彼女が大切な人たちから嫌われたくないと願うのは、また別の苦しさが見え隠れします。

今巻での、紫陽花さんから見た真唯は寂寥さと空虚な雰囲気に満ちており、いっしゅんこれが王塚真唯の本当の姿なのかと錯覚しそうになります。
しかし前回、水族館で紫陽花さんを説得した真唯はまぎれもなく"真唯その人"であり、"クイーンローズの王塚真唯"を演じていたかどうかというのは問題ではありません。
なぜなら、善きライバルであり友人を演じていたのだとしても、根底にあるのは『優しくありたいと心から望む王塚真唯』であり、演じていたのだとしてもそれは真唯の一部です。それは、彼女がけっしてからっぽな存在なんかではないことの証明でもあります。

真唯も、れな子や香穂ちゃんと同じく『演じる』という側面が強いキャラクターです。
しかし、彼女の場合『クイーンローズの王塚真唯』を演じている時間が長すぎて自分を見失っていることが分かります。
これはれな子視点ではぜったいに見えない一面でありながら、れな子にしか手を差し伸べることができない部分です。

それが見えないれな子だけでは救えない側面であるため、なまじ演じきれる真唯、れな子はそれに気づかないままその下を去り、紫陽花さんは良心の呵責かられな子と別れBADエンド。といった可能性すらありえました。

自分でしといてなんだけど、妄想の解像度高めで吐きそう。

真唯が救われたのは、ひとえに彼女の友人たち皆がれな子や真唯をフォローしてくれたからだと言えます。

紗月、紫陽花、香穂。そういった大好きな人たちに支えられ、助けられてきたからこそれな子はあのステージに立ち、皆が不幸にならない結末が生まれたのだと思います。
ただし、現時点で皆が不幸ではないというだけで皆が幸せになれるかどうかは、主人公である甘織れな子にかかっているのですが…。

紗月さんを考察しててヤバい事実に気づく

さてシリアス度が高い今巻ですが、クールビューティーの仮面を被ったお笑い芸人とも称される(称されてない)琴紗月についてツッコんでいきましょうか。あんな見た目して本編で面白いことしかしてないの、ほんと奇跡だと思う。

とはいっても、今回もまた琴紗月株がバク上がりしました。やっぱり紗月さん、いい子ですね。真唯のこと、大好きですね。
彼女は何があっても真唯の味方なので、困った時はよく相談に乗っていたようです。『紫陽花の告白そのあとで』でも真唯は琴家に転がり込んでいます。

というか、考察しててヤバい事実に気づいてしまったのですが、ここでの紗月さんはバイト帰りです。つまり、もしかしなくても真唯は琴家の鍵を所持していることになりますよね。

  • 夜のお仕事がある紗月母とは顔を合わせる事がないのを分かっていた可能性は高い。
  • それでなくても、落ち込んだ姿を人付き合いの上手いはずの紗月母に隠し通すことはできないため、見られたくないはず。
  • つまり、真唯は元々鍵を所持しておりあの時間帯の琴家で一人になれるか、バイトがない紗月がいる(流石にバイトのシフトまでは把握してないだろうから)と考えていた可能性が高い。

まいさつ派に爆弾が投下されてしまったな(爆散)。オタクの妄想なんですが…。

ここでの紗月さんは、真唯の友人として寄り添いながら何も言わず背中を撫でる優しさを見せます。そして望むものはなんでも手に入れてきた、あの王塚真唯がここまで弱ったすがたを見せることに困惑しています。

ここで重要なのが、恋を知った王塚真唯がここまで翻弄されているという事実に、紗月さんが少なからず衝撃を受けていることだと思います。この時点でも紗月さんは、『恋なんて、クラスで他に娯楽のない少年少女が夢中になるジャンクフードのようなものだ』と考えています。2巻でいろいろあった気がしますが。あの巻だけでれな子に3回もキスしてますが。

1回目のファーストキスは事故(ファーストキスが事故ってなんかもうどうしようもないな…)だとしても、2回目は自分の気持ちの確認のため、3回目は真唯を動揺させるため…だとしていますが、それにしたって契約関係の恋人に2週間で3回はキスし過ぎではないでしょうか。
とはいっても、この時点でもれな子を意識しているわけではなさそう。そして、4巻のラストでも甘織れな子に恋をしているわけではないように思えます。

ではラストでなぜ、琴紗月は甘織れな子に「付き合って」と言ったのか?

ギャグかシリアスかで言ったら、限りなくギャグでしょう。
ラインでガチ告白する紗月さんが想像できなくてじわじわきますし、文面が塩すぎて失笑しますし、れな子の二股を知りながら好きになるほど愚かな紗月さんではないはずです。軽率だけど。
明らかに『あなたのことが大好きだから』付き合って。ではないことが分かると思います。

ここで少し遡って、恋を知った真唯に衝撃を受けた紗月さんに注目してみましょう。
ここでの紗月さんは、かなり動揺していることが文字からも伝わります。
あの真唯すら恋に振り回されているという現実、そして紫陽花さんをも行動に移させる恋という感情。

つまり、彼女が興味を持ったのは「恋愛」そのものではないでしょうか?

2巻で「恋愛に意味がない」と断言していた彼女が、恋愛に興味を持つのはメチャクチャ面白い 感慨深いものがありますが、なんやかんや言って彼女も愛情深い人物です。それを受けるのがれな子なのがどうしても納得がいきませんが。

というか、恋を知るために手っ取り早く恋人の契約関係を結んだことのあるれな子を選んだ(紗月さんにとっては契約しなおしたネット○リックスと同レベルなのだろう)のかもしれませんが、それで恋を知ってしまったられな子のことが好きになってしまうのでは? いいのか…? 初恋があの女で? ほんとに…?(真唯と紫陽花さんに失礼)

なので、4巻のラストの時点で紗月さんはれな子に恋はしていないが、恋を知りたくなった可能性があると私は考えています(大人びた雰囲気で忘れがちだが紗月さんはまだ16歳である)。
それは恋に恋するというより、大好きな真唯と紫陽花さんが、恋にうつつを抜かしあまつさえカノジョの二股を認めて一緒になって付き合いはじめたから(なんか文字に起こしてたら私も現実を認められなくなってきた)。
あそこまであの三人を魅了し、苦しめ、動かした恋という感情を知りたくなったのではないでしょうか?

あの三人の結果を抜き取るなら、真唯と紫陽花さんに二股をしたれな子というゴミクズだけが残りますが、ステージ上の彼女らは美しかったと断言できます。

ゴミクズのれな子もめちゃくちゃ美しく見えるのはなにかのバグでしょうか。おかしい…きれいなゴミだな…。

紗月さんはいまだ恋を知りませんが、恋の芽は2巻の時点ですでに蒔かれているのかもしれません。そう、甘織れな子によって。くそがよ…。

紗月さんの感情はある意味分かりやすいですが、れな子のことを『ひとりの人間として好きでもなんでもない』と言っているので、つまり嫌いではないのでしょう。
ただし、ステージ上での告白前の話なので好感度は現時点でかなり下がってる可能性があります。
香穂ちゃんと真唯に対しては今でも変わっていないはず。ただいつの間にか、紫陽花さんに対しての好感度がかなり上がっているようです。
素直になれず刺々しい言い方しかできないけれど、ほんとは優しい紗月さんにとって善意の塊である紫陽花さんは天敵のようでしたが、愛情を素直に示せる唯一の人間になっているのかもしれません。
それが伝わるのがイベント会場でのくだりですが、コミカライズ版わたなれ4巻の描き下ろしでも示されています。ここではプレゼントをくれた皆に感謝の意を示す電話(と真唯だけメール)をかける紗月さんが描かれます。問題のシーンが紫陽花さんとの電話のくだりです。

なんと、『瀬名』呼びだったのが『紫陽花』呼びになっているではありませんか。
紫陽花さんの「紫陽花だよ。なーにー?」の破壊力もヤバいのですが、あの紗月さんが普段していない相手に名前呼びをしているという事実。
二人だけの時は名前呼びしている…?あじさつやばじゃん…。もしかしてこのふたり付き合ってるのか…?
ちなみに皆がいる時は瀬名呼びに戻っています。普段の名前呼びは恥ずかしいのかな?と夢がひろがりますよね。(誤植とか夢の無い可能性は考えないこととする)
というかこれでは、紫陽花、香穂、真唯と他のメンバーは普通に名前呼びなので、れな子だけがあの中で名字呼びなのが笑えます。
でもあの紗月さんが「れな子…」なんて呼んだら、まず詐欺風邪を疑いますよね。想像ができない。けれど「れな子」と声をかけて無表情だけど弾む声色で話す紗月さん。それはそれでアリなのでは…?名前呼びされるれな子ムカつくけど。

幼馴染の素肌をすべすべしまくるな甘織れな子

ここまで散々けちょんけちょんに貶してきましたが、甘織れな子は優しくてつよい女の子です。

彼女の優しさは彼女自身の弱さが元ですが、もしかすると強いから優しいのかもしれません。彼女の強さとは、一言で言えば自らの『弱さを認める強さ』です。
彼女には他の人と同じように、良いところもあれば悪いところもあります。
ですが、自分の嫌なところから目を逸らさずそれを抱えたまま走れる人間というのは、なかなかいないと思います。
現にあの真唯ですら自分の欠点に気づいたときにはがんじがらめになり、身動きが取れなくなっていました。

れな子は、欠点が多いというより、自分の悪いところに正直に見つめすぎるだけ。
ネガティブになりやすいのは欠点と言えますが、それでも引きこもりの状態から自分から脱却したように、自分の嫌な部分を知っても立ち上がる強さは持ち合わせているように感じます。もちろんそれも、家族など身近な人の支えがあったからこそでしょうが。

彼女の好きな点でもう一つ。人の悪口を言わない点があります。
ラブホ女子会をした時れな子が独白していましたが、『自身がコンプレックスにまみれているから(悪口を)言えない』と。
しかし、小学生時代から人の悪口を言っていないようでした。なので、単純に人の良い面を尊重できる性格なのでしょう。
だからこそ、憧れを素直に口にできる。しかし、そのせいで無自覚、無意識的に口説いてるみたいになってるんだよな(怒) れな子そういうとこだぞ(いきなりキレるな)

彼女の女たらしっぷりは、今に始まったことではないのでここでは割愛しますが、今回は香穂ちゃんに手玉取られることが多かったれな子。
旧知の仲であり、ふだん隠している趣味をオープンにできる間柄なので、他のクインテットのメンバーとはまた違った空気感が魅力的でした。
やられたりやり返したり、気のおけない友人同士のかけ合いは見ていてずっと楽しかった。
そして、似た者同士である二人がステージ裏で交わした言葉、「本当にやりたいことから、逃げたくない」と。「好きだから。その気持を裏切りたくない」と。心からの熱意を示したれな子を、認めざるをえません。
でもね、ラブホのお風呂でスケベ心満載で幼馴染素肌すべすべしまくるのはどうかと思うんだよ(なんといっても真唯と紫陽花さんを待たせている状況でのアレである。私はキレた)。

けど、普段はあけすけな香穂ちゃんに意外な一面を知れてうれしいところもある。ありがとうれな子。でもムカつくから土に埋めるね。

というか、この状況でラブホに行ってたことが紗月さんにバレたら流石に土に埋められるのでは…?
彼女は静かに怒るというより、呆れ果てたら口もきいてもらえなさそうなのが怖いですね。なんやかんやで面倒見がいい紗月さんに見限られたらおしまいみたいなとこある。大親友の紗月さんに見限られたらマジでおしまいだぞ甘織れな子。彼女に嫌われないとお墨付きをもらったれな子は普通にウザい。
今後、紗月さんにどう扱われるのか楽しみで仕方がない。
とりあえず、紫陽花さんや真唯を悲しませるようなことになったら埋められるのは確実でしょう。

話は変わって、真唯とれな子に関して。この二人は正反対でありながら共通項が多いという話を前にしていました。それは嫌われたくないという思いだったり、落ち込み方が似ていたり、自然体ではない、人から求められる姿を演じていたり。
隠し通している姿を真唯みずからが明かすことはないのかもしれませんが、真唯のような陽キャの塊のような人物でも同じような悩みを抱えていることを知れば、それがれな子の力になるのではないでしょうか。
それはそれとして、真唯が今回あそこまで曇ったのは確実にれな子のせいでもあるので、答えを出すためのインターバルとして仕方ないことではありますが、あの期間中で他の女とイチャコラしてたのはほんと…。
クインテットメンバーの白日の下に晒されて断罪されろ、甘織れな子ォ!

そして紫陽花さん、やっぱり彼女を幸せにできるのはれな子なんだよな…と思うと同時に、紫陽花さんをくるしませるのもれな子なんだよな…と再確認。楽しいだけが恋愛ではないとはいえ、他人の苦しみですら抱え込もうとしてしまう彼女が、真唯の苦しみすら背負い込むのは当然の帰結でした。
れな子もれな子で、いっぱいいっぱいなので彼女らのフォローがまったくできていないのは…うん仕方ないところもある。だけどそこは、本当に真唯と紫陽花さんの仲が悪くなくてよかった。

実際のところ、今回は、ガチめのクインテット崩壊の危機だったと思いますが、全員の活躍のおかげでなんとか持ち直せた物語でした。
これがほぼ、れな子の頑張りやらかしによって引き起こされたことを考えると、なんとも言えないのだが。
まあれな子もクインテットのみんなと同じく、人一倍努力して死にものぐるいで頑張っているので責めることはできないのだが、それでもやっぱりれな子は悪いよ。

本当『全方位に不義理』を働いているし、ぶっちゃけ臆病でどうしようもないほどネガティブでコンプレックスを脳内でリフレインしてばかりでしぬほどウザいのだが、だけどどうしてもキライになれない主人公なんですよね。それは彼女は悪い子でないしむしろいい子だからなんですけど、やっぱりそれでもれな子は悪いよ。

なんでこんなやつを大好きになってしまったのか私は…。好きになる要素ないでしょ…うそ、めちゃくちゃある。

最後に

もはや、れな子の悪行魅力については本編で語り尽くされていると思いますし、彼女たちの選択は、彼女たちだからこそできた選択だったと納得していますので、ここで多くを語ることはしません。
…と言いたかったのですが、気がついたらこれほどまでに書くハメになってしまいました。申し訳ありません。

ひとまず、気持ちの整理のための4巻の考察、感想はこれにて終わりになります。

今回一区切りとして完成を迎えたわたなれワールド。5巻で臥薪嘗胆女ことさつきというおんながどれだけ「フッ…おもしれー女…」してくれるのか期待に胸をふくらませて待ちます。
2巻で分かっている読者も多いでしょうが、紗月さんは賢者と愚者かしこいばかの両面をもつトリックスターなので、彼女が回す(ぜんぜん回せてない)巻は面白くなること間違い無しです。

最後になりますが3巻に引き続き、はちゃめちゃ面白いガールズラブコメをありがとうございました。感謝。

 

*1:終盤では、お互いを羨んで自虐を繰り出していたのが発覚するので二人とも五十歩百歩である。