サブリミナル白昼夢

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屋上の百合霊さん 感想・考察 「10年経った今だからこそ不朽の名作を」

朝の光 浴びて うんと背伸びしてー
歯ブラシくわえたら うかんだ あの人ー

 

はじめに

『屋上の百合霊さん フルコーラス』は、2012年にライアーソフトが発売した不朽の名作のフルボイス版(2018年)だ。初登場から10年以上経っている作品である。

私は最初プレイする時、正直古臭いゲームだろうなと思っていた。

しかし、本作は〇年代~2010年初期の百合作品の潮流だった、同性であることの葛藤を描くスタイルではあるが、まったく古臭さを感じさせなかった。

むしろ、同性であることの葛藤、逡巡、彼女たちのアイデンティティを描くことによって、相手が「好き」だという、ただ一点の感情を際立たせている点が素晴らしく、ものすごく普遍的な恋愛について描いていると感じた。

また、本作は百合であると同時に、青春群像劇でもある。

軽めの百合にくわえ、カップル以外の友情物語のほか、女の子の暗く重い感情にも焦点を当てているため、百合をあまり知らないプレイヤーでも、百合好きなプレイヤーでも深く楽しめる内容となっている。

主人公の描き方

さて、主人公の結奈は魅力に溢れた人物だが、料理とその有能さ以外はまさに一般人と言っていいほど普通だ。

彼女は、同性愛についてほぼ知識がないただのマジョリティ(男女で付き合うのが普通だと思っている人)である。

これは、2010年初期では普通の反応だと思われる。つまり、彼女はプレイヤーの価値観に近い存在として描かれている。

ここで巧みなのが、彼女は最初、同性のカップルに理解がなく*1、サチと恵本人達の前で目に見えて困惑する。これはカップルである本人たちの前でかなり失礼な態度だ。

しかし、その後、カップルになりそうな二人を陰ながらお手伝いしていくことで、彼女は同性を愛することについて理解を深めていく。

そして、物語の終盤、同性である比奈から告白される。だが、同性だからということで断ることはしない。

今までお手伝いしてきたカップルたちがどうだったかを考え、自分が相手のことをどう思っているかを一生懸命に考える。そして最後に、ただ自分が彼女を好きだからという、たった一つの大切な理由に気づいて、受け入れる。

百合の初心者かもしれないプレイヤーに寄り添った、丁重な物語の構成にはとても感嘆した。

 

このゲームの中で最も重要なこと、つまりクリア条件は何かを考えてみよう。それは、ゲームを終わらせることではない。*2

このゲームの(製作者が課した)クリア条件は、プレイヤーが同性愛について順を追って学び、同性愛について理解を示すことで、キャラクター達に感情移入できることだと言える。そのためには百合に否定的なプレイヤーでも、彼女たちの愛が間違っているとは言えなくなるほど、女の子同士のカップルについて、人と人との結びつきを緻密に描く必要がある。

だからこそ、このゲームは丁寧にそれを描いている。

その人と一緒にいるだけであたたかい気持ちになったり、顔を見るだけでどきどきしたり、考えるだけで胸が高鳴ること。声を聞くだけで嬉しくなったり、新しい面を見つけて驚いたり、好きな人に触れて、触れられて嬉しくなること。

そして、嫉妬したり、たまにすれ違って、思ってもないことを口にして喧嘩したりすること。好きという感情が行き過ぎて失敗したりすること。その恋愛という営みを。

結奈×比奈について

さてここからはキャラクターについて書きながら、作品全体について考えていきたい。

正直、登場人物全員好きなのだが、私が特にお気に入りの二人が結奈と比奈だった。

彼女たちは幼馴染で、つい最近まで特に互いを意識することなく過ごしていた。

一緒にいるのが当たり前で、家族であり、友人である、大切な人。それはこれからも変わらないと思っていたはずだ。

結奈が比奈を意識し始める過程を、丁寧に描いているのも本作の特徴だ。

結奈にとっての瑕疵を話して、それを黙って見守ってくれていた相手に気づいた時、彼女の思いは変化していく。この過程がとてもゆっくりでもどかしく、そして愛おしい。

昔から一緒にいる結奈と比奈は、相手を想い合う気持ちが強く、それが恋愛感情ということに気づくのにとても時間がかかるが、それが彼女たちの関係の魅力でもある。

 

私は、比奈の寡黙なところ、それでいて、思っていることははっきりと伝えてくれる誠実さ、自分自身と相手に素直なところがとても気に入ってる。

恋に気づいた時の彼女は、かわいいシーンが多い本作でも一位二位を争うほど好きなシーンだ。そして、アフターで描かれていた、告白後の一人で恥ずかしがっている場面がすごくお気に入りだ。

 

そして、主人公である結奈だが、彼女は有能でありながら嫌味でなく、傷を抱えながら、それでも立ち直ろうと成長していく主人公である。

物語の構成やキャラの造形は王道かもしれない。しかし、ここまで面白く、魅力にあふれた主人公とそのバッググラウンドを描くのは並大抵のことではない。

彼女の魅力の一つは、そのお節介さだが、過去にあった出来事によって目立つのを避けてきた。それは変えることの出来ない過去だ。

そして傷ついた心、魂は元に戻ることはない。

なぜなら傷ついた魂は、強くなるから。

あなたも過去、つらいことがあって心に傷を負った経験があるかもしれない。だがそれは、ケガをした皮膚と同じように、元の状態に戻るのではなく、もっと強くなれる。

その傷だらけの自分は、簡単には美しいと言えないかもしれない。それでもきっと、美しい。

結奈もそうだ。彼女は意図せず友人たちの本音を聞いてしまい、深く傷ついた。それによって目立つことを恐れ、それを誰にも言えずに傷を隠して生きてきた。

だが、彼女は強かった。サチと恵に出会うことで、お手伝いをしていくなかで、他人と積極的に関わっていくことで、彼女本来の明晰さ、積極さを取り戻した。

過去を乗り越えて、大切な人である比奈に話すことで、自らもまた彼女に気づかないうちに助けられていたことに気づけた。

そうやって、過去を乗り越えた彼女が次に気づくのは、一番そばにいてくれた比奈の優しさだというのも、とても理解できるのだ。

阿野について

比奈に告白されたあとの結奈はとても長い間悩んでいたが、これは彼女自身が自分の気持を分からなくしてしまっているのだと感じた。

女の子同士であるしがらみや、彼女に感じているのはどんな愛なのか、なまじ彼女は頭が良いため、行動する前にさまざまな可能性を考えてしまう。

それによって悪い想像ばかりになってしまってがんじがらめになっていた。

それを支え、解きほぐしてくれたのが、彼女が助け、関わってきたカップル達であり、そして、それを人知れず助けてきた阿野藤という存在だった。

彼女、阿野藤の存在はとても大きい。一言で言うなら甘え上手なのだろう。人に世話を焼かせることが上手く、人の世話を焼きたがる結奈とは相性がとても良い。

だからこそ彼女は結奈の変化には目ざとく、また、ほどほどの距離感を保ち、遠慮なく踏み込もうとしないので、他人と関わるのを避けてきた結奈が、阿野だけは受け入れた理由が分かる気がする。

一点だけ、彼女への批判として、阿野の百合オタク的な部分はギャグ要素とはいえ、同性愛者、同性しか好きにならない人のことを考慮していない点だ。

「好きになった人が女の子だった」がすべてであるような言い方*3や、当事者やいわゆる”nmmn”に対する遠慮のなさは、私としては受け入れ難い点だった。ここは2010年代のゲームだということを考慮すると、仕方のない点ではあるのだが。

ただ、全体として見ると彼女は影の主人公と呼んでも差し支えないほど活躍した、愛すべきキャラクターだ。

結奈のことを支え、立て直した功労者であり、同性への恋の相談を真面目に聞いてくれる、『主人公の親友ポジ』だけでは収まらない魅力にあふれていた。

本作は現代の価値観からこうして見ると、たしかにところどころ古く感じる点はあるが、それでもLGBTQ+コンテンツとしての価値は、とてつもなく高い。

 

百合は、(3年ほど前から)いま最高に高まっていると言われるほど、エンタメとして成功した。

それはひとえに現実のLGBTQ+への理解が進んでいるおかげでもあると思う。たしかに、いまだに現実の同性愛や性的少数者への偏見やヘイトは根深い。

それでも私たちは、百合を通して現実のLGBTQ+の人々やそれらに対する偏見を知り、見ることで正すことができる。

私は百合を愛するなら、現実のLGBTQ+への問題にも目を向けるべきだと思っている。

なぜなら、マイノリティをエンタメとして消費しておきながら、マイノリティについて何も知らずにいるのは、とても不誠実だからだ。

私は、本作をプレイしてところどころ感じていたのが、同性であるから普通じゃない、隠さなければいけないと、本人たちに強いる社会に対するいらだちだ。

月代×桐について

たぶん、本作はそこまで想定していないだろうが、序盤に物議を醸したのが、月代×桐のカップルというか、月代ちゃんの発言だった。

教師×学生の王道百合なのはいいとして、ものすごく引っかかったのが告白してきた桐に対して、断る理由が「勘違いだ」と言ったことである。

 

同性への憧れが恋心と勘違いするのはあるのかもしれない。しかし、少なくとも桐は自分が同性愛者かもという不安を伴って告白してきた。その桐へ向かって、「勘違い」と諭すのは同性に限らず、恋心自体の否定であって、大人への信頼を無くしてしまう可能性がある。

ただ、この場面は月代ちゃんが過去にそういうことを言われて、(同性への)恋心を信じられなくなってしまった結果ではあるので、一概に彼女自身が悪いとは言えない。

しかし、責任ある大人という立場の彼女が、過去の瑕疵によってでも、他人の恋愛感情を勘違いと断言することはあってはならないことだと感じた。

だが、フラレてしまったその後の桐がとてつもなくカッコいい。初登場時の可愛いもの大好きな変人ムーブからは考えられないイケメン具合を見せてくれる。

告白した本人に勘違いと言われ、それでも考えて出した答えは、好きだと。

そして、月代ちゃんが過去にあったことと同じように、桐を傷つけてしまっていたことへの反省をしてくれた。序盤はいったいどうなるのか…と不安な二人だったが、最終的にはかなり好きになれたカップルだと思う。

聖苗×美紀について

さて、どんどんカップルを見ていこう。次は聖苗×美紀の二人だ。

聖苗△

フルコーラスで声優さんがついて良かったキャラクターの一位二位を争うのではないだろうか。

ブチギレてる時の声量とふだんの声質があまりにも違いすぎてビビった。フィジカルつよめのキャラだが、身長は比奈とあまり変わらないかわいい系なのもチャームポイント。アフターで、クラスメイトである比奈との会話で、交友関係を深めていく過程が見れたのもグッド。

ぐいぐい行ってしまうので、たまに暴走して寝ている好きな相手にキスして泣かせたり恋人を馬鹿にした上級生を張り倒したりするけど普段はいい子。いい子かな?

また、ゲーム内ではじめてのキスシーンが聖苗×美紀のあの場面だったわけだが、あまりに胸がつまるキスシーンでキレそうだった。

全体として、話の緩急がとても上手く、コメディとシリアスの配分もよく考えられている作品だと感じた。

また、聖女と呼ばれる美紀だが、内面の鬱屈した部分を嫌味にならない程度に、それでいて深く描いており、この塩梅によって、とても魅力的で深みのある人物になっていたと感じた。(あと美紀ちゃん、聖苗さんに押し倒されるの好きね)


羽美×沙紗×音七について

羽美×沙紗×音七の三人というか、登場人物たち全員の中で、地味に好きなのが音七である。

彼女のさっぱりとしているように見えて友達思いで聡いとこや、他人をよく見ているところがすごい好きだった。

羽美×沙紗が同性であることを理由に付き合うのをやめると悩んでいた時、はっきり怒ってくれたところに好感が持てる。好き同士である二人が、自分に気を使って付き合うのをやめるなんて言ったら、私でもキレるが…。

そこできちんと怒ってくれた音七は友人達に対して、とても誠実だと思うし、彼女が本当に二人のことを考えてるのが伝わって嬉しくなった。

羽美×沙紗の付き合う前のほろ苦さと、付き合い始めの初々しく甘酸っぱい感じがとても好きだった。二人っきりの相合傘での告白、無限に好き。素直すぎるキャラと素直になれないキャラの組み合わせ、無限に好き。それを当たり前のように受け入れて見守ることができる音七、無限に好き。

この三人はおばあちゃんになっても、一緒にいるんだろうなと思える友情に溢れたキャラ達だった。

茉莉×美夕について

茉莉×美夕、熟年というより、どちらかというと同棲したてのふうふのような、喧嘩するほど仲がいいのを感じさせたのがこの二人。同性であることの障害をいちばん感じさせられたのが彼女たちだった。

しかしまあ、なぜか相手が同性になるだけで、第三者はどうしてか、将来はどうするの?と聞いてくるという。異性だったら学生なんかの恋愛の将来なんて深く考えないくせに…とキレそうになるが、このゲームは純愛ゲーであり、障壁はあっても別れることなんてないので置いといて。

 

あけすけにもっと触れていたい茉莉と、隠しながら付き合いたい美夕のアンバランスさが見ていて愛らしかった。

というか二人が付き合ってるのは、部内(学内)では暗黙の了解なのでは…?と思っていたが比奈がまったく知らなかった&告白してくる人が多いところを見ると、そうでもないらしい。うそだろ承太郎

美夕は心配性で気苦労も多そうだが、茉莉のほどよい適当さ、突き進む愚直さには救われていると思うので、かなりバランスのいいカップルではある。ただ、周囲を痴話喧嘩に巻き込むくらいには面倒くさい二人なので、それに巻き込まれた結奈と比奈は可哀想。けっきょくそれが比奈が恋心に気づいた(結奈が意識した)きっかけにもなったので、悪いことばかりではないのだが。

茉莉が性欲つよいというより、半年も我慢させていた美夕サイドにも問題があると思う。ちゃんと息抜きさせてあげてほしい。二人とも大学に入ったらものすごいことになるんだろうけど(下世話)。

アナザーで明かされる、茉莉が美夕を取られるかもしれない不安に弱いというのがチャームポイントだった。


陽香×愛来について

陽香×愛来は全体を通して見ると、作中でもっとも安定していたカップルだった。

陽香の同性であることを問題としない素直さ、愛来の同性を好きになることへなんの後ろめたさも持たない直情さ、とても好ましく、たくましく、カッコいい。

ライブのカッコよさはフルボイスだからこその演出が光り、挿入歌のAA愛はとても滾る。

Rita(理多)さんはLittle Busters!(I've Sound)で聴いたことがあったが、OPの楽曲と陽香役での演技を合わせて、素晴らしい歌い手で声優さんなのだと実感した。

また本作の、他の声優さんは一人二役が多いが、正直聞いててまったく気づかなかないほどで、声優さんというのはすごいものだと感じた。

愛来は本作で唯一、レズビアンであることを明言するキャラクターだが、陽香がただの興味深い対象から、恋愛対象に変わっていった過程を想像するのも楽しい。

付き合った後はあまりにも陽香LOVEすぎて、指導後にすぐ太鼓櫓に連れ込んで初エッチしたり、トイレに連れ込んでキスするのは流石に笑ってしまったが。直情的な彼女らしい。彼女もかなりロックなんだよな…。

サチ×恵について

さて最後に、サチ×恵だ。サチと恵は長く一緒にいたこともあって、熟年ふうふという印象が強い。そのため、基本的には二人の問題を結奈が解決するというより、結奈に寄り添ったり、発破をかける場面が多い。

美紀ちゃんが大変そうに手伝いをしているのを見て、おもわず口を出してしまった結奈に寄り添うサチは、とても印象深い。

彼女は自らを偽って騙していることに罪悪感を感じているようだが、それでも寄り添いたいと願ってそうしたのは彼女の本心だろう。優しく、それでいて押し付けがましくしないでただそばにいるだけという姿勢は、彼女だからこそできることだと感じた。

恵は、サチとはまた正反対で、結奈に対して反抗的ながらも鼓舞しようとする存在になっている。彼女の魅力は、心配を素直に口に出せずに、あべこべな憎まれ口を叩きながら檄を飛ばすその姿勢だ。

内心は心配しているのに、素直に口に出せない姿は生意気な年下の妹を見ているようで微笑ましさもあるのだが、それでも彼女であるサチさんに対する執着心は人一倍強く、雨の中での結奈への宣言は怖いくらいに感じたし、その中には、ある種の美しさを感じた。彼女はその恋愛感情によって幽霊になったくらいだし、重さがあるのは重々承知の上だが。

また、普段は素直でないからこそ、最後のお別れのシーンでは彼女が素直に感情を吐露して泣きじゃくっていたのが印象的だった。結奈に出会えたことを感謝しており、別れるのが寂しいと思ってくれているのが伝わってきた。

そして、お別れシーンはとても印象深く、また結奈もどれほど屋上に行く日々を大切に思っていたのかが伝わってくる。彼女はサチと恵のおかげで他者とかかわり、一歩前へ進むことができた。彼女たちに感謝しながら、これからの日々を過ごしていくのだろう。

総評

さて、百合歴も長い私が、なぜこの作品をプレイしてこなかったのか理解に苦しむのだが、それでも、百合というジャンルを読み、考え、積み重ね続けた、今だからこそプレイできた偶然に感謝している。

本作の総評として、メインのほか、各キャラクターとカップル達視点の恋の物語、それに加えカップル以外のキャラクター達の交流を描いたアフターを含めると、膨大な量のテキスト(コンプリートまでプレイ時間40~50時間ほど)であり、フルプライスの美少女ゲームとしても大満足の内容になっていた。

キャラクターの内面を事細かに描写できるノベルゲームは、百合との相性もいい。キャラ達へ寄り添い、内面描写がたくさん描かれており、それでいて本作のテキストは一定の軽さがあるため読みやすく、進めやすい。

原画であるPeg氏のやわらかでソフトタッチな絵も、百合の初心者からは受け入れやすく、百合ゲーマーも大満足するような作風だったと思う。

また、影の主役だったのはコーラス付きのBGMだろう。学校のチャイムや教室にいることを思い出させるような楽曲の数々、作品全体の明るさを象徴するような楽曲は聞いていて楽しい。

カレンダー式のUIも遊び心があって、プリクラやイヤホンからとべる閲覧モードには遊び心があり面白かった。

 

物語全般を通して、女の子同士の恋愛感情だけではなく、レズビアンであることのアイデンティティを確固として持ったキャラクターを、ここまで率直に描いたものは日本のゲームでは珍しい(洋ゲーではライフイズストレンジなどがあるが)。

女の子同士での葛藤、日本独特の障害や、周囲を気にせざるを得ない空気感については、残念ながら現代日本の現実に即している。

異性愛と違い、未だにあけっぴろげにできない空気感については現在から見てもリアルだと感じた。

 

誰しもがその人らしくあることができる世界になることで、百合はもっと面白くなるし、百合を描いたり、百合について考えることで、誰しもがその人らしくあることができる世界に近づけるための、『お手伝い』ができるのではないか、と私は考えている。

本作をプレイしながら、2012年の百合に思いを馳せつつ、また、未来に描かれるはずの百合がどうなるのかを夢見ている。

 

百合は、いったいどこまで行けるのだろう。私は、それを楽しみにしている。

 

*1:あまつさえ一度だけだが侮蔑語である『レズ』の人と呼んでいる。恵は「そんないやらしい言い方じゃなくもっときれいな関係と言って」と話しており、レズ(ビアン)=いやらしいと連想させるような描き方はまた問題ではあるが。

*2:ゲームのクリア条件が『ゲームを終わらせること』というのはあまりにもナンセンスだ。そもそも、エンタメの基本は終わらせることではなく、視聴者やプレイヤーを満足させ続けることである。

*3:もちろん同性愛者には同性のみに向く人も存在する。