サブリミナル白昼夢

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嘘から始まる恋の夏 体験版 感想「空の青さと青春の痛みをあなたに」

清らかなタッチで描かれる、少女たちの痛みを伴った物語。

最初に目に飛び込んできたのは、空の高さ、青さ。……そして狭さ。

青く、美しく、儚げで、なんて窮屈そうなんだろうと。

それはたぶん、彼女たちも同じで、いろいろなしがらみから逃れられない高校生という年齢も大きく関係している。

ストーリー

初恋の相手に告白してはフラれ続け、それでもダラダラと関係を続けているたちばなかかおるは、その相手であり、同時に中学時代の担任で未だにセンセイと呼ぶ霜月しもつき深玲みれいとのデートを時々楽しんでいた。

ある日、いつものようにデートを楽しむ薫だが、そんな彼女とは裏腹に深玲の表情はどこか晴れない。デートも終盤に差し掛かり、薫は何も気づかないフリをして話を切り上げようとするが……。


本編では風に揺れる髪と合わせてとても情緒的

というわけで、主人公である薫が、片思い相手にフラれるところから物語は大きく動き出します。

今作のヒロインであり、もう一人の主人公と呼べるであろう御凪みなぎ栞里しおりときちんと話をするのは、身投げ(実際は勢いあまって海に落ちそうになっただけ)しかけた直後という。(しかし、この時の栞里は身投げについて妙に詳しそうな素振りを見せているが……?)

薫と栞里、家族関係の問題や大切な人を忘れたいと願う、境遇が似ている二人ですが、表面よりもっと深い根の部分がどこか似ているように感じました。

体験版の範囲ではどこが似ているのかまだ言語化できませんが、薫の「好きについて」の軽い問いかけに栞里は深く思い悩んだような描写があったので、人を好きになったことがある(もしくは人から好きを向けられて本気で悩んだことのある)女の子なのかなと感じました。

本作は主人公の失恋からはじまるという、あまり楽しい雰囲気ではないスタートとなりますが、そんな空気も明るくしてくれそうな猪ノ原いのはら莉久りくちゃんが個人的には気になりました。体験版の範囲ではほとんど出番がなかった彼女ですが、初登場時の台詞、「待ってる、待ってるからぁっ!」の迫真さにクスリとしてしまいました。


「待ってるからぁっ!」←かわいい

照れ屋で元気いっぱいということで、褒められると怒ってしまう天邪鬼なネコっぽい雰囲気がとてもお気に入りなので、本編での活躍に(主にツッコミ役として)期待が高まります。また、栞里に恋心を抱いているという記載もあったので、そういった面での活躍にも期待が高まります。

本作の特徴

透明感のある登場人物たちが織りなす、綺麗なだけではない人間味あふれた想いの数々。

作風としては夏の高い空のような、突き抜けて爽々さわさわとした明るさがあり、けっして暗いわけではありません。ただ言葉の端々から、彼女たち(体験版では特に栞里)が積み重ねてきた過去の重さを感じさせるものがあり、このキャラクターはどういう過去があって今に至ったのだろう?とすごく気になりました。

塩こうじ氏の描く魅力的なキャラデザとそれを引き立てるモーション、そして背景。

LYCORISのゲームは今作が初プレイとなりますが、とても綺麗な絵だなという第一印象でした。女の子の可愛さをぎゅっとつめこんだような目を引く鮮やかさが特徴的なキャラデザです。氏の絵で興味を持ったのが未島海晴(FATAL TWELVE)だったと思ったので、いつかこちらもプレイしてみたい。なんかめちゃくちゃ重いらしい(シナリオと未島海晴が)。そういうの大好き。


横浜の実際の風景が写実的に盛り込まれる

また、キャラクターと本作の雰囲気にマッチした背景も魅力的です。東京湾に面した横浜のインターコンチネンタルホテルやコスモクロックなど、ランドマークもばっちりおさえており、とても美しく描かれています。フラレてやさぐれている薫のシーンと、周りの景色の美しさが対照的で印象に残りました。これから栞里とは、思い出の場所を周るとのことでしたので、そういったロケーションの美しさにも期待が高まりますね。

センセイについて

また、印象に残っているのがセンセイ(先生じゃなく親しみをこめて聞こえる響きが好き)であり大人である霜月深玲の存在です。子供(と大人の微妙な狭間で生きる高校生)である薫と対比のような存在ですが、「恋人ができた」と言って取り付く島もなくフラレてしまいます。
ただ、どう言い出そうかを悩んでいたのは薫にも伝わっていたので、これまでの関係は遊びではなかったことは分かります。ここは推測になりますが、ダラダラと続いていた関係をきちんと終わらせるために、大人としてのケジメをつけるために『きちんと』フッたのではないでしょうか。

深玲が薫を恋愛対象として見ていたのかは分かりませんが、個人的には恋愛感情があるからこそ元教え子をきちんと導く、大人として諭したような気がしています。だとしたら、恋人ができたというのも(自分を)諦めさせるための『大人の嘘』なのでしょうか……。センセイの内面がとても気になります。


ピアスばちばちな耳もすごく好み

まとめ

重めのストーリーを予感させながらも、それを和らげてくれるようなキャラクターの(いい意味での)お気楽さに助けられ、体験版の最中に読み進めるのは辛いという事はありませんでした。

また、登場人物たちの会話している口調で、相手との関係が分かるのはすごいと思いました。誰と誰が仲がよく、この人物とはほとんど話したことがないのだろうというのが一目で分かります。
たとえば、栞里は普段、ほとんどの相手にどこか壁を作っているようでしたが、中学の頃から友人の莉久に対しては、心を開いているのが短い会話の声質だけで伝わってきました。薫ともこれからどんどん仲良くなっていくはずなので、彼女にくだけた態度をとる栞里の姿にも期待したいところですね。

本作では実況プレイも可能ということなので、今後ぜひTwitchにて配信させて頂きたいと思います。この感想を読んで興味を持って頂いたのなら「嘘から始まる恋の夏」、ぜひプレイしてみてください。

公式サイト

星海波にきしーのTwitch