おっと、タイトルだけで記事が終わりそうになってしまった。流石にネタバレを含むので記事内に書かせてほしい。
※わたなれ小説2巻までのネタバレと3巻についてすこし触れています。
わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 2 より
背中合わせに手を繋いでるのを見て「あっ、ふーん…れな子そういうことしちゃうんだ。ふーん…」ってなったのは私だけではないはず。
結論から言うと、
なにも私がいきなり、「まいさつ過激派」にめざめたワケではない。私は、「まいあじ穏健派」だ。他カプのポシビリティを否定するなどという過激思想を、私はもち合わせてはいない。
ただし甘織、テメーはダメだ。*1
3巻を読んでまいあじいいよね。ってなった。甘織?なにそれおいしいの?
……理路整然と順序立てて考えた結果、私はこの結論に落ち着いた。
もっとも、私は今の段階までどうしても2巻の感想を完成させることができなかった人間だ。
それは、「琴紗月推し」の皆様方に申し訳ないレベルの感想しか書けなかったからである。しかし2巻を再度読んだことで、あるアイデアが生まれたのだ。
まあ、一読者の「ちょっとした思いつき」ということで、気楽に聞いてほしい。
ちなみに今回は、紫陽花さんについて暴走して書いていないので安心してほしい。
琴紗月という女
長い黒髪をたなびかせ、鋭さと知性を感じさせる貌。
ダウナーでミステリアスな雰囲気をその身に纏う、黒曜石のような瞳と暗黒の輝きを持つ少女。
それが「琴紗月」である。
……と思っていたが違った。彼女は一言でいうと「ドチャクソおもしれー女」である。そして、残念なことに「治るかどうか分からないほどの大病」を患っている。
「王塚真唯」を拗らせているのだ。
ふたりは小学5年生からの長い付き合いだ。きっとたくさんの日常を積み重ねてきたのだろう。琴紗月が、「王塚真唯」を拗らせるに足る十分な日々を。
彼女はフロントラインでいつも、真唯を相手に堂々と戦ってきた。勉強、スポーツ、etc…。
その何もかもで、負けに負けに負けに負け続けてきたのだ。それがいったいどれほどの悔しさか。とても「分かる」などとは言えないが、かなりのフラストレーションだったことは伝わってくる。
そんな相手に、「好きでもない女に抱かれた時の気持ちを知りたいから、抱いてくれ。君、私のこと好きだろう?」なんて言われてみろ。時速160kmで飛んできた顔面デッドボールに憤死しかねないが、そこは「人間ができている」紗月さんだ。真唯の最愛の人を利用した復讐を軽率に思いつく。
結果としては真唯の最愛の女性、甘織れな子と関わったおかげで(荒療治だが)自身の「治療」へとつながっていく。しかし、その副作用として彼女の「おもしれー女」の側面が露見することになるのだ。
それこそが、「
二週間限定でれな子と付き合って鬱憤をはらすのは(彼女の人権はおいといて)まだいいが、見返した後のことをまったく考えていない。結局、その
というか真唯を見返して、自身の「再誕生」を宣言して浮足立った一分後に、
『? これじゃあ、あの女に完全勝利したことにならないわね…?』
となるの面白すぎなんだよな…。そこに辿り着くまでにどれほどの多大な犠牲を(主にれな子が)払ってきたのか少しでもいいから思い出して…。
こんなに
この時点ですら恋人(偽)のれな子(と、読者)に対して、軽率、意地っ張り、隠れ陰キャという変人(真)っぷりを晒し続けてきたが、彼女の魅力はもちろんそれだけではない。 *2
彼女が真唯に張り合い続ける理由、それは第一に「優しい」からだ。彼女は真唯が孤立しないためにいつも隣に立ち続けてきた。あと一歩届かずとも、幼なじみであり強敵(ライバル)として並び立つために走り続けてきた。彼女に負けても「自分自身に敗北する」ということをしなかった。
それが彼女の優しさであり、強さである。
しかし彼女は、好きな相手にも素直ではない。だが不器用ながらも、自身を好いてくれる人達にとても誠実だ。大好きな母親の誕生日に手編みの靴下をプレゼントするような子など、ギャップ萌えのおばけである。これには私も心臓をブチ抜かれた。いい子。
この「好きな相手にも素直ではない」性質は、2巻の最後の方でも自身によって利用される。すなわち、真唯への罵倒シーンである。彼女はここで真唯へ長年抱いてきた友人への愛情を打ち明ける。
しかしそれは本心から出たものだが、勝負に勝つために行った迫真の演技だった…。という流れだ。
彼女がここまで大胆な演技をしたのは、真唯をけちょんけちょんにするため…ではあるのだが、なにより『演技』という『建前』がないと本心を打ち明けることができなかったから、という照れ隠しの側面もあると思う。
自分が意地を張る理由を他の人に説明するのは、彼女にとって丸刈りにするよりも嫌なことらしい。
他の人に打ち明ける時点でそれほどなら、本人に対してならば、それ以上だろうと想像に難くない。琴紗月、難儀な性格よな…。
彼女の心情については、みかみてれんのpixivFANBOXに投稿されている「紗月と紫陽花の話 2巻2.5章」で描かれている。琴紗月にとって、紫陽花さんは数少ない相性の悪い相手だ。
ちなみにこの短編は、紫陽花さん『じゃあ、れなちゃんを殺そっか』、琴紗月「五人の甘織を殺す、かしら」、6人の「れなピクミン」がひどい目にあう、などかなり見どころが多い。
ここまで彼女の弱さ、そして強さについて語っていったが、やはり琴紗月はたくさんの魅力で溢れた人間だと再確認できたと思う。
次からは本題に入ろう。
初恋の相手は
勘のいい読者なら気づいているだろう、そして、あえて語る必要もないことでもある。だが、他の方の発言が見つけられなかったので、逆に書いておきたくなってしまった。
さて、私は「王塚真唯」の初恋の相手は「琴紗月」だと言った。
しかし、1巻で真唯はれな子に、
「私の恋人になるのは、初めての相手が最後の相手と決まっているからな」
と言っている。「初めての相手」とは前後の文脈から「初めて"好きになった"相手」、つまり「初恋の相手が最後の恋人」だと読み取れる。
これではさっそくこの解釈が矛盾するのではないか?と思われてしまうが、そのすこし前のページで「れな子を好きになった理由」を真唯が話す。ここに注目してほしい。
「初めてさらけ出した弱さを、君は受け入れてくれただろう? (後略~)」
真唯は自身の弱さをれな子に対して初めてさらけ出した。それを受け入れてくれたから好きになったと語っている。ここがポイントだ。
さあ、巻をまたいで2巻の内容だ。紗月に暴露された過去話の最後、幼い頃の真唯をかばった時に、紗月はなんと言っただろうか。
『真唯は、どこにも行かなくていいからね! うちの子になっちゃえばいいんだよ! 私がずっと、一緒にいてあげるからーーー!』
幼かった真唯は自分のわがままのせいで大変なことをしてしまったと、そんな彼女を見ても紗月はかばってくれた。つまり、本当の意味で「初めて」弱さをさらけ出し、それでも受け入れてくれた人間が、紗月なのだ。
そしてその話を思い出しながら真唯はれな子を見つめ、こうつぶやく、
ああ、と小さな声が漏れた。
真唯が、わたしを熱っぽく見つめている。
「そうか、だから私は君に……」
「え?」
「いや、なんでもない。そうだな、これは流石に野暮というものだ。私は君のことを、心から愛しているのだから」
と何かに気づいたように、忘れていた大切なことを思い出したように語る。
ここから読み取れるものがつまり、そういうことだ。*3
まとめよう。
今回、琴紗月の「ひねくれ」と「優しさ」について書いた。そして紗月と真唯の関係、今まで真唯が気づいていなかった、もしくは忘れていた感情についても書いた。
2巻の感想を書けなかったのは、ひとえに琴紗月についてすべて描かれたわけではないと感じていたからだ。それは、彼女と密接に関わっているであろう「小柳香穂」についてまだ描かれていないからでもあった。
なのでこの感想はどうしてもパズルのピースが足りずに、存在するピースだけで想像を膨らませて組み立てたものだ。
それを言い訳にするつもりは微塵もないが、琴紗月の深みはこれからもっと増すことになるだろう、と断言しておこう。
不思議なもので、この感想を書いてたらなぜか短編小説ができあがった。
ちなみに主人公のれな子について今回の感想でほとんど書いていないが、「琴紗月をたぶらかし心を
珍しく紫陽花さんについても書いてないが、
3巻を読み終わった今、
それにしても、琴紗月がメインの巻でここまで(感想も)面白おかしくなるとはまったくもって予想してなかった。それはやはり全力で生きる彼女たちみんなのおかげであり、彼女が「琴紗月という人間だったからだ。
彼女の台詞の珍妙さ、行動の奇っ怪さ、軽率さ、面倒見のよさ、愛情深さ、そして優しさ。
たくさんの要素が合わさって魅力的な女の子、「琴紗月」が形作られているのだと、少しでも伝わってくれたのなら嬉しい。
琴紗月はぜったいに認めたがらないだろうけどね!