サブリミナル白昼夢

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SeaBed 感想 「さあ、海の底を探検しよう」

ーーどこまでも広く、どこまでも深い海の底

ec.nintendo.com

 

 ゲームを起動するとまず、静謐な音楽があなたを迎えてくれる。

いつまでも聴いていたくなるほどすばらしい音楽だが、とりあえずスタートを押してはじめてみよう。 

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貴呼と佐知子

 

 

あらすじ

体験版はこちらから

middle-tail.sakura.ne.jp

  

物語は、三人の視点から紡がれるミステリーアドベンチャービジュアルノベル
序章、佐知子と貴呼、ふたりの会話から物語ははじまる。

 

水野佐知子ミズノサチコ

デザイナー。過去の恋人の幻覚を見るようになった。

 

楢崎響ナラサキヒビキ

佐知子の友人で精神科医。人間の記憶のメカニズムを研究している。

 

貴呼タカコ

佐知子の幼馴染であり元恋人。発作的に記憶を失う障害があり、佐知子と別離に至った経緯も覚えていない。

 

佐知子と貴呼は元恋人同士でどうやら五歳からの幼馴染らしい。

様々な描写から、ふたりの関係がとても深いものだったのだとあなたは理解する。

この、一見するとなんの変哲もないただの日常生活の描写が、彼女たちが本当に存在しているのだと思えるような現実感を与えてくれる。

 

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外で歌ってたら人がいた経験。あるある・・・ない?


だが、ここでひとつの疑問が生じる。

一緒に海外旅行をしたり、会社を立ち上げたりするほど親密でお互いに想い合っている関係なのに、なぜ別れてしまったのか・・・?と。
まぁ、好いている同士でも別れちゃうことはあるし、二十数年連れ添った仲でも、なにかしらの積み重ねでスポイルしちゃうこともあるのだろう・・・と、最初は思うだろう。

 

佐知子視点で物語が進むにつれて、友人の楢崎に久方ぶりに会う。会話の中で、あなたはほんの少しの違和感を覚えるが、それが何であるかにはまだ気づかない。

楢崎は、物事を理知的に判断する冷静な女性で、佐知子や貴呼とはまた違った視点で物事を見据えている。

 

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楢崎。「はっ」と独特のため息をつく。フワリンベン


ふたたび、佐知子と貴呼の日常生活の一片。

やはりふたりは、分かち難い特別な関係だったのだろうと感じる。ここまでくると、なぜこのふたりが別れたのか、あなたはある意味野次馬根性で、疑問の答えを知りたくなる。


その疑問は物語が進むにつれ、水をつめこんだ水風船のようにどんどん膨らんでいく。

そして序章の終わりに、それは破裂する
疑問に対してひとつの真実が提示されるが、その真実は連鎖反応的に瞬く間に新たな疑問を生む。

そして気がつくと、あなたはこの作品を読み進める手がとまらなくなっている

 

面白いワケ

この作品が面白い理由を三つ挙げるなら、

  1. 綿密で解像度が高いテキスト
  2. 現実と幻想の卓越した演出と、それを加勢する音楽
  3. 物語のテーマと、それを伝えてくれる世界観の奥深さ

です。

 

1.綿密で解像度が高いテキスト
ミステリー作品なだけあって伏線が細かに仕組まれています。

しかし一周目ではほとんど気づかないので、この作品の本質は二周目にあると言っても過言ではない。

一粒で二度おいしい。』というフレーズがこれほど似合う作品はないでしょう。

佐知子と貴呼の関係はどこまでも現実味があり、キャラクターとしてもとても魅力的。つまり、解像度が高い。

私達がいる現実世界に、彼女たちは存在しないかもしれませんが、彼女たちの関係は確かに存在しています。

 

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貴呼のボケや佐知子のツッコミは、まるで長年連れ添った夫婦のよう。「それは手遅れよ」


2.現実と幻想の卓越した演出と、それを加勢する音楽

現実と幻想のあいまいさ。プレイしているとなにが真実で、なにが真実でないのかが分からなくなってくる描写が本当にすばらしい。

BGMも相まって驚きと不安感の連続でした。ちなみに楽曲はオリジナルではないそうですが、SeaBedの世界観にマッチしすぎていて最初オリジナルだと思っていました。

それほどまでに調和がとれた演出です。

 

3.物語のテーマと、それを伝えてくれる世界観の奥深さ

この作品はミステリーといっても推理小説のようなジャンルではありません。

生まれてきた理由といったような、理解するすべがなく、説明もまたできないことを扱っている作品です。

そのため、事実 *1のような、明確な答えは出てきていないように思います。

けれど、そんな底なしの昏く深い問いを投げかけられても、

「あなたにもきっと答えを見つけられるんだよ」

と、この作品をクリアしてしまう時に伝えられたような気がしました。

その他にも、この作品の隠されたテーマなどを語りたいですが、それはネタバレありの感想でまたの機会に。

 

まとめ

綿密なテキストや、キャラクターたちの心の機微、印象的な音楽とグラフィック、謎、それらすべてがすばらしいバランスで融合した、パレオントロジーさんのビジュアルノベル SeaBed

Switch版が3/19に発売ということで、発売直前記念にネタバレなしの感想となります。

Switch版には追加のシナリオ(Tips)もちょこっとあるようで、PC版ではまった方にもおすすめです。たぶんおまけ程度の内容ですが、SeaBedの世界がまた広がるとなると買うしかないでしょう。

小説のような手軽さが、それこそベッドに寝転がりながらプレイスタイルに向いている作品だと思っていたので、Switch版発売がとてもうれしく、待ち遠しいです。 

ここまで書いておいてなんですが、このネタバレなしの場合、書きたいことの1割程度しか書けてません

それほどまでに広く深い作品です。 

ぜひ、そんなSeaBedをプレイして、思考の深い海の底まで潜ってみてください。

*1:真実ではなく事実。ここでは嘘偽りのない主観的なことを真実、本当にあった客観的な事柄を事実としています